新しい「日本神話」の読み方
古事記
成長する神々

斎藤英喜・著
定価1,890円(税込)
四六判  並製 240頁

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荒ぶる神から英雄へ〈スサノヲ〉、袋担ぎの少年から王へ〈オオクニヌシ〉、戦う女神から皇祖神へ〈アマテラス〉……。

なぜ神々は変貌するのか


『古事記』の神話世界のほんとうの魅力を知ろうとするならば、やはり「原文」にそくして理解することが一番大切だ。
そして概説やあらすじからは見えてこない『古事記』のほんとうの面白さは、原文のなかの言葉、一語、一語のなかに秘められていることはまちがいない。
そう、
「神は細部に宿りたもう」、だ。
そこで、本書では、『古事記』の原文の引用に訳文を付け、原文にはどう書かれているのかをやさしく解説しながら、神々の生き生きと活躍する姿を追い、
『古事記』に隠された秘密を読み解く。

プロローグ
二十一世紀の『古事記』へ /ローカル・アイデンティティとしての『古事記』/『古事記』成立の経緯とは /「成長する神々」の神話世界 

1.天地創造の章──アメノミナカヌシ・タカミムスヒ・カムムスヒ
「高天の原」から始まる神話/陰陽の気が天地を生成する/『記』『紀』の違いが意味すること/なぜ始元の神は身を隠すのか/アメノミナカヌシとムスヒ神/三・五・七の謎/◉「古事記偽書説」をめぐって/『古事記』成立の謎と偽書説/偽書説への反論、残る課題/「序文」は、平安時代の偽作? 

2.イザナキ・イザナミの章──「性」の秘儀と「死」の起源
誘う男、誘う女/古事記神話は差別的か/兄妹婚神話という古層/なぜ近親相姦はタブーか/「成り成りて成り合はざる……」/呪文のオモテとウラ/呪術としての音声/黄泉つ国」で何があったか/イザナミが発する呪詛/ヨミを「黄泉」と表記したこと/桃の実の呪力とは/「今、出雲の国の伊賦夜坂といふ」/「黄泉つ国」に行かないイザナミ/「大神」となるイザナキ・イザナミ/◉ヒルコのその後と「中世日本紀」/流されたヒルコの運命は/中世における龍宮城 /「中世日本紀」とは何か/

3.スサノヲの章──荒ぶる英雄神の怪物退治
スサノヲの魅力とは/啼きいさちるスサノヲ/根の堅州国への追放/アマテラスとの「うけひ」の謎/『日本書紀』のスサノヲとは/高天の原のスサノヲと「大祓」/なぜ「殺された女神」が挿入されるのか/出雲の国に降ったスサノヲ/ヤマタノヲロチの「正体」とは/老翁によるヲロチの姿語り/自称敬語」と「英雄と怪物の両義性」のロジック 92
献上された「草なぎの大刀」/八雲立つ 出雲八重垣…… 

4. オホクニヌシの章──葦原の中つ国の「王」と国譲り
複数の名をもつ理由とは/「稲羽の素兎」は何を語るのか/麗しき壮夫と成りて…… 106
根の堅州国で待ち受けるもの/「大国主神」の誕生/根の堅州国のスサノヲ/「王」をめぐる女性たち/海の彼方から寄り来る神/ウサギ・ネズミ・カエルの神話世界/神々の戦いの顚末/怨霊信仰の原型として/「出雲」をめぐる『記』『紀』の違いとは/◉ある出雲大社参拝記/ラフカディオ・ハーンに導かれて/冥界への通路として/国譲り」の浜辺から

5. アマテラスの章──戦う女神から皇祖神へ
戦う女神・アマテラス/変成術としての「うけひ」/生まれた子どもたちの所属は/「詔り直し」が意味すること/「日の神の巫女」という原像/岩屋の外で何が行われたか/引っ張り出されるアマテラス/命令を発する神として/アマテラスの魂、「鏡」のなかへ/もうひとつの伊勢神宮の起源/『日本書紀』のアマテラスは/タカミムスヒ登場の謎/その後のアマテラス

6.天孫降臨の章──地上に天降った神たち
幻視される「大嘗祭」/「一夜孕み」「火中出産」は何を語るのか/聖婚のエロスと暴力/「失われた釣針」を求めて/隼人・俳優の民の由来/根の国とワタツミの国との違いから/トヨタマビメの正体とは/近親婚と異類婚の複合として

7. 天皇と英雄の章──神話と歴史のミッシング・リンク
異界へ去っていく兄たち/「神武東征」の深層/「熊野」というトポス/「王」のふたつの身体/顕現したオホモノヌシと崇神天皇/オホモノヌシとは何ものか/「出雲の大神」の祟りと夢/ヤマトタケルとは誰か/クマソ討伐の物語 /東征とタケルの死/もうひとりのヤマトタケル/ヤマトタケルから本居宣長へ、そして「今」へ
あとがき   
参考文献一覧 

【著者紹介】(さいとうひでき) 1955年生まれ 日本大学大学院博士課程満期退学 佛教大学文学部教授 神話・伝承学専攻 おもな著書に『アマテラスの深みへ』(新曜社)、『いざなぎ流 祭文と儀礼』(法蔵館)、『安倍晴明-陰陽の達者なり』(ミネルヴァ書房)、『読み替えられた日本神話』(講談社現代新書)、『陰陽道の神々』(思文閣出版)ほか。

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